【タイトル】

『はかれないものをはかる』

【本文】

 この本は、私が大切にしている本や絵本の中の一冊です。作者は工藤あゆみさん、イタリア在住で活躍されている方です。一見、子供向けの絵本のような装丁や大きさで、中身も、ページごとに、実にシンプルなイラストと言葉で構成されているものです。  けれども、ここに挙げられている49の言葉は、毎日の生活の中で、自分が大切にしたいものや自分の生き方や目標におきたいものについて振り返らせてくれるような、そんな言葉の数々なのです。  今回、親子読書の期間に合わせて紹介をしようと思っていたところ(前回の6月には、次女とは何も交流できなかったのを、今回はこの本で親子読書を実現させたので、そのことと一緒にご紹介しようと思っていたのです)、その時期をずれてしまい、どうしようかと思っていたところに、その本の言葉をお手本にしてみると、「心の中の思いやりの芽の育ち具合を測る」とでも言いたくなるような出来事が、五大小に伝えられたので、やはり取り上げることにしました。  それは、先週の金曜日のことでした。  地域に住む、ご高齢の女性からの電話の内容は、「数日前、道路で思い切り転んでしまい、困っていたところに、通りすがりの女の子が二人で助けてくれた」ということへのお礼でした。その子たちは、自分の乗っていた自転車を停めて、ガードレールも越えて駆け寄ってくれ、起き上がるのを手伝い、履いていた靴も荷物も散らかったのをそろえてくれた。名前は聞けなかったけど、小学校を聞くと、五大小と答えたので、それで連絡をくださったということでした。2年前に同じように転んだときには、通りすがりの大人は誰も助けてくれなかったのに、今回は、小学生の二人が素早く助けてくれたことが本当にうれしかったですと、何度もお礼の言葉を述べられていました。  今朝、全校朝会でこの話を伝え、「五大小のこどもがこんなに優しい、思いやりのある子に育ってくれていることをうれしく思います。もしよかったら、その方のお礼の言葉をちゃんと伝えたいので、校長室に声をかけに来てください。」と話したところ、中休みに、5年生の女の子が二人で来てくれました。  その子たちは、まさかこんなことになるとは思ってもいなかったでしょう。自然に駆け寄り、手助けをしただけのこと、と思ったようです。でも、その子たちの中に育っている思いやりの芽は、どれほど伸びていることかと思わずにはいられませんでした。そして、それがこれからも大きく育ち、やがて花が咲いたり、実になったりすることも願わずにはいられません。  親や教師は、はかれないものをはかりながら、こどもたちの心のいろいろな側面を育てるために、どうしたらいいのか考えながら寄り添ったり、叱ったりの繰り返しのような気もします。今回、私の好きな本になぞらえ、五大小に届けられたうれしい話を元に、考えたことを書かせてもらいました。本の紹介を大きく外れているかもしれませんが、是非、ご一読をとお薦めします。


【添付ファイル】

この記事に添付ファイルはありません。